韓流彼氏 ‐最終章:だいすき
2010/03/31 00:00 - 韓流彼氏
★(前回までのあらすじ)スビンから再び誘われたコンサート最終日の楽屋。遥香はそこでスビンが謎の女、ミジンに抱きつかれているところを目撃する。
ショックを受けた遥香は、スビンと話すのも早々に楽屋を後にする…。
最終章:だいすき
(あの小説では、どうなるんだっけ、この後……)
奇しくも小説と同じ展開。
楽屋に行ったら、好きな人がきれいな芸能人に抱きつかれていた。
私はブックマークを開き、小説を読み返してみる。
(彼が誤解を解きに走ってきてくれる……か……)
スビンは追いかけてくる様子もなく、私は自宅に着いてしまった。
(私ってばなに舞い上がってたんだろう……ばかみたいだっ)
私は切ない気持ちをどうすることもできなくて、
布団にくるまっているうちにいつのまにか寝てしまった。
*****
翌日、私は気の抜けたままで学校に行った。
あかねは周りの席の女子と『MARIA』やスビンの話題で盛り上がっていたけれど、
何となく話に乗れなくて、私は相槌だけを打っていた。
「そういえば遥香! スビンに抱きつかれていたけど、
スビンとそんなに仲良かったっけ?」
「あぁ……昔、ちょっと喋ったことあったから、テンション上がって
抱きついちゃったんじゃない?」
苦笑いの表情で、私はあかねに言った。
「ふぅん……」
ぼうっとしているままに授業は過ぎていって、1日が終わった。
今日は予備校もなかったので、どうしようと考えているうちに、
……私は、気づいたらスビンと話していたあの公園に辿り着いていた。
(たしかにいい思い出ではあるけれど、今も恋しているかって言われたら、
スビンはそんなわけないよね……)
そう思いながら、ブランコに乗った。
キィ、キィと揺らしていると、黒塗りの高級車が公園のそばに停まるのが見えた。
「ん……?」
近くにアスレチックのたくさんある公園があるため、
ブランコとすべり台しかないこの公園は、夕方でもいつもはあまり人気がない。
こんなところに誰が何の用だろうと思い、顔を上げて見ると、
その車から降りてきたのはなんとスビンだった。
「えぇっ!?」
「……ここにいた。予想、あってた」
スビンはにっこり笑って、私のそばへ近寄ってきた。
「えっ、まさか、……私を探してたの?」
「もちろん。……日本に来たら、絶対に遥香に会いたいと思ってたから」
「なんで……」
「ずっと、遥香に会いたかった。遥香に会うために、がんばった」
スビンは、私の目の前に立ち、私の瞳をまっすぐに見つめながら言う。
「遥香のおかげ。日本のこと、だいすきになった。
日本に行くために、アイドルになった。
日本に留学しても、遥香は忘れてるかもしれない、って思った。
だから、遥香に忘れられないように、日本に行って、活躍した」
たどたどしいスビンの日本語は、私とすごく会いたかったんだという
彼の気持ちを伝えてくれる。
「で、でも……昨日の女の子……」
今の言い方だと、ともすればスビンの気持ちがわたしと同じだと
勘違いしてしまいそうになる。
韓国から追いかけて来てくれる……親しい女の子が、いるのに。
「昨日の?」
「あの、……楽屋にいた、きれいな子だよっ!」
「あぁ、ミジン。ミジンは僕の、妹」
「妹!?」
「久しぶりに会ったから、ミジンもハイテンションだった」
妹だったら……たしかに、カッコいいお兄ちゃんが大好きで、
抱きつくのも頷けないこともない。
私は誤解していたのだ。
「もしかして……ミジンのこと、彼女だと勘違いして先に帰った?」
図星をさされて、私は真っ赤になる。
「なっ、ちがっ、私はっ!」
「ごめんね、遥香にそんな思いをさせるために呼んだんじゃ、ない」
慌てる私に笑みを見せながら、スビンは言った。
「遥香は、本当にいい子。彼女だと思って気使って、先に帰った。
優しくて、かわいい。今も、変わらない。」
「かわいい、って……!」
その言葉にいたたまれなくなって、私はどうしていいかわからなかった。
「ミジンはかわいい妹。でも、遥香は違う。
ずっとずっと、遥香のことだけ、考えてた。遥香への気持ちは……」
そう言って、スビンはブランコに座る私に、視線を合わせた。
「ねぇ、遥香。韓国語の『サランヘヨ』、日本語でなんて言うか知ってる?」
「え……えぇっ?!」
その言葉は、あまりにも有名な韓国語だ。私ですら、知っている。
でも、その意味は……。
「ねぇ、遥香」
スビンは私の名前を呼んで、にっこり笑った。
「……す、好きとかそういうの、だった気がするっ!」
私は早口でぶっきらぼうにそう言った。
それを聞いて、スビンは満足そうに微笑み、ブランコに座る私を抱きしめた。
「じゃあ、それが日本語で僕の気持ちを表す言葉だ」
「遥香、すき。だいすき」
――あの時と、同じ言葉だった。
「これから、日本にツアーとか、収録とか、たくさん来る。
……そのたびに、遥香と会いたい。お別れ、したくない」
「スビン……!」
(スビンも、私と同じ気持ちなの……!?)
「遥香に会えなくて、つらかった。でも絶対、日本に来てもう一回
遥香に告白しようと思った。やっとかなった。……遥香は?」
私は、恥ずかしいんだか嬉しいんだか切ないんだか、もう
気持ちがぐちゃぐちゃでわからなくなっていた。
でも、精一杯の気持ちを込めて、首を縦に振った。
(私も同じだよ、スビン……!)
「ありがとう、だいすきだよ、遥香」
スビンの顔が近づいてくるのがわかり、私は目を閉じた。
私にとって初めてのキスを、スビンがくれたのだった。
スビンはこの公園まで、私を追いかけてきてくれたのだ。
……ハッピーエンドなのも、あの小説と同じだった。
~fin~
